5.魂を運ぶラザニア

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「俺、四つ」  先に答えた片倉さんに「それは聞かなくてもわかるわよ」と笑う。いきなりやってきてお雑煮までごちそうになっては……と戸惑う私に、ウィリアムさんも「一緒に食べまショー」と言ってくれる。 「では、お言葉に甘えて二つでお願いします」 「あら! それだけでいいの? やっぱり女の子は少食だわねぇ」  ほほほ、と笑ったお母さんは、流暢な英語でウィリアムさん家族にもお餅の数を尋ね、お手伝いを申し出た私に「いいの、いいの。お客様なんだから座ってて」と、どこかウキウキした様子で部屋を出て行った。 「いつもは僕と二人だけですから、料理のし甲斐があって嬉しいみたいです」  私の表情から察したのか、お母さんの気持ちを代弁する片倉さんもなんとなく嬉しそう。ニャンコがたくさんいるとはいえ、普段は二人きりなんだもんね。片倉さんは仕事で忙しいだろうし、こんなに賑やかなのは久し振りなのかもしれない。  しばらくするとふんわりといい匂いが漂ってくる。ほどなくしてお母さんから招集がかかり、みんなでダイニングへ行くと、食卓の上はお雑煮、重箱に美しくつめられたおせち料理、それとは別の皿盛りの一品料理などが所せましと並んでいた。シャンパンやチーズ、チキンハムなどがあるのはウィリアムさん家族向けだろう。一品料理の中には、神社で食べ損ねてしまった玉こんにゃくもあって嬉しい。そしてなにより、メインのお雑煮が……! 「わぁ、すごい! ハゼ出汁ですね!」  思わず感嘆の声を上げてしまったのは、片倉家のお雑煮が伝統的な仙台雑煮で、ハゼの焼き干しで出汁を取るものだったからだ。
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