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「だって、まどかさんは御厨さんのことが好きなんでしょう? そういう気持ちって、一度芽生えたら他人がどうこうすることなんて出来ないと思うんです」
う、うん……確かに。
「だから僕は御厨さんを諦めてくれとは言いません。その代わり、あなたのすぐ傍で待たせてください。それでもしも、御厨さんの傍にいるのが辛くなったり、忘れたくなったりした時は、遠慮なく僕の気持ちを利用してほしいんです」
えっ!? 片倉さんの気持ちを……?
「だ、駄目です、そんなこと!」
ビックリして立ち上がると、片倉さんはこのやり取りを予知していたように落ち着いた様子で私を見上げた。
「いいんですよ。さっきも言ったでしょう? 僕は恥知らずなんです。まどかさんが僕を必要としてくれるなら、自分のプライドなんてどうでもいい。──それに一旦こちらを向いてくれれば、忘れさせる自信は十分にありますので」
余裕たっぷりに、しかもひときわ魅惑的に微笑まれて、火が出そうなほど顔が熱くなる。絶句して固まった私に片倉さんは満足げな様子だ。
「それはともかく、現在の心境については承知しました。御厨さんとどうにかならない限り、僕たちの関係にも変化は起きない。これまでと同様、一線を越えることなく友達でいる。それでいいですよね?」
「は、はい……」
理路整然とした結論に気圧されると、頷き返した片倉さんは、ふと何かを思い出したように遠くを見つめた。
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