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あの時、私一人だったら、絶対にタクヤ君の問題は解決できなかったと思う。おばちゃんが折り良く帰って来てくれて本当に良かった……。
そう考えると、桧野さんたちがお店にやってきたのは、やっぱり必然だったのかもしれない。おばちゃんはそれを「何かに呼ばれたのかも」と言ったけれど、まったくそのとおりだと思う。ミクリヤには昔からそういう不思議な力があるんだ。
* * *
仕事を終えて帰宅した私は、持ち帰ったポトフをあたため直し、ありがたくいただいた。本当なら寝る前に何か食べるなんてNGなんだろうけど、明日の朝までなんて待てるわけがない。
というわけで、まずはスープを一口。牛すね肉の旨味とニンジン、ポロネギにタマネギ、セロリにカブ。いろんな野菜の香味と甘味、それに陽ちゃんがこだわっているフルール・ド・セルという自然塩の奥深い塩味がまろやかに溶け合い、素材すべてのパワーが疲れた身体に沁み渡る。
「ああ、幸せ……」
あまりのおいしさにホッと溜め息をつくと、自然とそんな言葉が出た。
明後日にはタクヤ君もママの愛情たっぷりのポトフを食べるんだろうな。
そう思ったら、幼気な笑顔が見えるようで、心までぽかぽかになった。
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