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あの日から一人になってみて、これまでの涼太とのやりとりを思い出すんだ。
何で俺なんかがいいの? って、俺は繰り返し聞いたと思う。
あんまり聞くから、涼太は鬱陶しかったんじゃないかな。信用されていないって思ったかもしれない。
でもそれは違う、原因は涼太じゃない。俺の方にある。
あれからよく考えたんだ。
俺は質問するばかりで、聞かずにいられない理由を、話していなかった。
そんなの、フェアじゃないよな。
俺は意図的に、言わなかった。この話題に関して、俺は永く閉ざしてきたから、正直、直接面と向かってちゃんと説明できる自信がない。
涼太も俺に言ってない事があるだろ?
ごめん、瑞樹から前に、ちょっとだけ聞いてしまった。涼太が浅野家の実子じゃないって。
そんな事、全然知らなかったから、すごく驚いた。涼太が自分で口に出したことじゃないのに、知ってしまったことに罪悪感がある。
たぶん、涼太は言いたくないから俺に知らせないできたんだろうから。
俺を選んだ理由を、涼太が微妙にはぐらかし続けるのは、そんなふうに、言いたくない事に関係しているんだろう。
涼太はこの先も本当は、話したくないのかもしれない。
でも、二人して秘密を抱えながらこの関係を続けるのは難しい。俺は納得できるまで、きっと聞き続ける。
だからそれを聞くのなら、まず俺から話さなきゃならない。
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