10.冬の手紙……和真

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 小学校の時、俺が転校してきた頃のこと、覚えてる?  俺、態度、悪かったろう。自分でもすごくふて腐れてたの覚えてる。  涼太はしつこいぐらい俺に絡んできたけど、だからと言って俺の事を詮索したりしなかった。ただ楽しく遊ぶことや、くだらないことをしゃべるためだけに、傍にいてくれた。それは俺にとってすごくありがたいことだったんだ。  俺ははじめから、無口だったり、人付き合いが嫌いだった訳じゃない。触れられたくないことがあったから、交わろうとしなかった。まずはそれなんだ。    あの頃、学校の皆に知られていたことは、うちが離婚して、父親だけじゃ面倒が見られないから、祖母の家に引っ越してきた父子家庭って事ぐらいだ。  確かに間違いじゃない。だけど、あれには少し、補足がある。  うちは離婚した訳じゃない。  母親は蒸発した。  今でも、生きてるのか、死んでいるかわからない。あまりにも唐突だった。  事故に合う事を誰も予測できないように、あの日もごく普通の日で、俺はそれまで何年もそうしてきたように笑顔で見送られて学校に行き、帰ってみると、家には誰もいなかった。  荷物も減ってない。夕飯用のお米が炊飯器にセットされている。  俺はそのままずっと待っていた。
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