10.冬の手紙……和真

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 おばあちゃんとの生活は、そのやさしさと心配のぶんだけ窮屈になった。  学校からは真っ直ぐに帰ってくること。  友達の家に遊びに行かないこと。  友達を家に呼ばないこと。  家のことを話さないこと。  塾や習い事をして交友関係を広げないこと。  とにかくおばあちゃんは、俺が人の目に触れることを極端に嫌がった。誰かの目に留まれば、その分だけ、危険が増えると固く信じていたからだ。  毎日の時間割を正確に把握していて、少しでも帰宅時間が遅れると血相を変えて探しに出る。そのたびに『和真までいなくなったら取返しがつかない』って、泣かれるから、俺はもはや一切の友人関係を諦めた。  帰宅すれば家からは出してもらえない。  唯一出られるのは、丘の上にあるおばあちゃんの庭の手入れをする時だけだった。  おばあちゃんと庭いじりをするのは嫌いじゃなかった。だけど、学年が上がるごとに、物足りなくなっていった。  俺はどんどん大きくなる。友達だって年相応に自由が拡大してくる。  学校で、放課後に友達の家に集まってゲームをしたことや、公園でのサッカー、コンビニでおやつを買い食いしたり、みんなで同じ塾に通ってる話を聞くと、疎外感が募った。  そして、何より、涼太が羨ましかった。  友達との遊びだけではあきたらず、探検ごっこと言いながら、遠い町まで出歩くその自由が眩しくて仕方なかった。  俺には、たった五駅先の生まれ育った町すら果てしなく遠かったから。
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