880人が本棚に入れています
本棚に追加
おばあちゃんとの生活は、そのやさしさと心配のぶんだけ窮屈になった。
学校からは真っ直ぐに帰ってくること。
友達の家に遊びに行かないこと。
友達を家に呼ばないこと。
家のことを話さないこと。
塾や習い事をして交友関係を広げないこと。
とにかくおばあちゃんは、俺が人の目に触れることを極端に嫌がった。誰かの目に留まれば、その分だけ、危険が増えると固く信じていたからだ。
毎日の時間割を正確に把握していて、少しでも帰宅時間が遅れると血相を変えて探しに出る。そのたびに『和真までいなくなったら取返しがつかない』って、泣かれるから、俺はもはや一切の友人関係を諦めた。
帰宅すれば家からは出してもらえない。
唯一出られるのは、丘の上にあるおばあちゃんの庭の手入れをする時だけだった。
おばあちゃんと庭いじりをするのは嫌いじゃなかった。だけど、学年が上がるごとに、物足りなくなっていった。
俺はどんどん大きくなる。友達だって年相応に自由が拡大してくる。
学校で、放課後に友達の家に集まってゲームをしたことや、公園でのサッカー、コンビニでおやつを買い食いしたり、みんなで同じ塾に通ってる話を聞くと、疎外感が募った。
そして、何より、涼太が羨ましかった。
友達との遊びだけではあきたらず、探検ごっこと言いながら、遠い町まで出歩くその自由が眩しくて仕方なかった。
俺には、たった五駅先の生まれ育った町すら果てしなく遠かったから。
最初のコメントを投稿しよう!