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たぶん、俺はもうこれ以上傷つきたくなかったんだ。
不安だからこそ、この関係がいかに不確実であるかを、俺は自分に何度も言い聞かせた。
涼太はいつも優し過ぎるほど優しかったのに、それを一過性の好奇心じゃないかと思おうとした。興味のまま探検するように、手近な相手でそういう付き合いを試したいだけじゃないのかって。
そのくせ、何度も体を重ねるうちに、涼太を失うことが怖くなった。
でも、大学ことも将来のことを、曖昧なままはぐらかされ続けて、涼太の本音が見えない。
俺はあの頃、確かに苛立っていた。
どうして俺は、また、勝手に思い込んでしまっていたんだろう。
涼太はいつも、追いかけてきてくれる。
無理して同じ高校を受験してくれた時みたいに、また、一緒の道を選んでくれる。
俺はなぜか、それだけは当然のように思っていて、いると思って振り返ったら、涼太がいなかった。そんな気分なんだ。
でも本来、恋愛も、友情も、進路も、別の次元の話なんだよな。
俺の中では全部が絡まって、訳がわからなくなってしまった。
委員長に意地を張った結果とはいえ、この時期に距離を置く事になって、むしろよかったと思う。
いっぺんに何もかも考えられるほど、俺は器用じゃない。
受験が終わって、進路も俺たちのことも全部気持ちが決まったら、二人で会いたい。
その頃はもう春かな。長いな。
三月の最後の日、あの庭で待ってる。
望月和真 』
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