10.冬の手紙……和真

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 たぶん、俺はもうこれ以上傷つきたくなかったんだ。  不安だからこそ、この関係がいかに不確実であるかを、俺は自分に何度も言い聞かせた。  涼太はいつも優し過ぎるほど優しかったのに、それを一過性の好奇心じゃないかと思おうとした。興味のまま探検するように、手近な相手でそういう付き合いを試したいだけじゃないのかって。  そのくせ、何度も体を重ねるうちに、涼太を失うことが怖くなった。  でも、大学ことも将来のことを、曖昧なままはぐらかされ続けて、涼太の本音が見えない。  俺はあの頃、確かに苛立っていた。  どうして俺は、また、勝手に思い込んでしまっていたんだろう。  涼太はいつも、追いかけてきてくれる。  無理して同じ高校を受験してくれた時みたいに、また、一緒の道を選んでくれる。  俺はなぜか、それだけは当然のように思っていて、いると思って振り返ったら、涼太がいなかった。そんな気分なんだ。  でも本来、恋愛も、友情も、進路も、別の次元の話なんだよな。  俺の中では全部が絡まって、訳がわからなくなってしまった。  委員長に意地を張った結果とはいえ、この時期に距離を置く事になって、むしろよかったと思う。  いっぺんに何もかも考えられるほど、俺は器用じゃない。  受験が終わって、進路も俺たちのことも全部気持ちが決まったら、二人で会いたい。  その頃はもう春かな。長いな。  三月の最後の日、あの庭で待ってる。                                        望月和真 』
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