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真面目な委員長は、義理堅く約束してくれた。
だから、いつでも俺は安心して涼太のことを聞ける。
「ねえ、持田先輩。涼太、学校でどう? 今頃になって突然、猛勉強はじめたんだけど」
「んー……」
持田先輩の視線が泳いだ。この人は本当に馬鹿正直だ。ろくに嘘もつけない。
「進路指導の先生にきつく言われたみたいだよ」
俺は無邪気に先輩に飛びついた。
「ねえそれほんと? 言ったの、先生じゃなくてもしかして先輩じゃない?!」
案の定、その一言だけで持田先輩はたじろいだ。俺はいつもの笑顔を作る。
「やっぱりそうか。ありがとう先輩、兄ちゃん、勉強しないとやばいって、家中みんなで心配してたんだ。俺がいつも愚痴ってたから、先輩から話してくれたんだ!」
「あ……まあ、なんか和真も困ってたし、言ったら、なんか浅野も意地みたくなって、受かるまでは、もう和真とも話さないって」
「へえ……」
俺は、目の前が開けていくような気分になった。なるほど、これは本当に想像以上だ。
「ありがとう、ほんとよかった」
俺は口元に笑みが浮かびそうになるのをこらえた。でも、持田先輩は俺の様子を観察するほどの余裕はないみたいで、自分の手元ばかりを見ていた。
「別に、和真があのままじゃ気の毒だったし。俺もなんだか腹が立って」
俺は、先輩と涼太との間に、和真を挟んだ諍いがあったことを察した。
状況はともかく俺は、涼太の本気が嬉しかった。
涼太には友人も沢山いたけど、誰も正当な評価を涼太に下していない。でも俺の遠い記憶の中に残っている涼太は、明るくて適当なだけの存在じゃないのだ。
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