11.冬の手紙……瑞樹

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「もうすぐ卒業式ですね、先輩と塾で会えるのもこれで最後かな」 「そうだな、浅野にもよろしく」  持田先輩は荷物をカバンにしまうと、肩にかけた。そそくさとした一連の動作で、俺との会話を続ける気はないのだと悟った。 「じゃあ、これで」  持田先輩は委員長らしく、どこまでも品行方正に右手を差しだした。  俺は実直そのものの大きな手を握り、『正しさ』を突き付けられているような気がした。  生真面目で正義感に厚くて、俺みたいに薄汚いマネなんか決してしない。  それが無性に癪に障った。    俺は手を握ったまま、一歩前に近づいて声を潜めた。 「和真とももう、会えなくなりますね」 上目使いで視線を捉えると、持田先輩は落ち着きなく瞬きをした。 「いきなり、なにを」 「だって好きでしょ、先輩」 いつもの温和な表情が、瞬時にして凍った。 「この塾の近くですよ、和真んち。駅とは逆側の方向の一番背の高いマンション。大通りからは一本裏道に入るけど、目立つからすぐわかると思う。親がほとんど不在で一人暮らし同然なんだって言ってたよ」  持田先輩は俺を睨むように見返した。  どうせ、あのマンションで涼太と和真がやっているようなことを、この清廉潔白な委員長だって、心の底では望んでる。
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