11.冬の手紙……瑞樹

9/9
前へ
/250ページ
次へ
 俺はそう思いたかったし、そう思う事で自分を正当化したかった。   俺一人が荒んだ気持ちでいることが、許せなかった。 「和真は涼太以外にそんなに親しくしてる人もいないし、ほんとは寂しいんじゃないかな。大学、どこに決めるのかわからないから、春から先もそこにいる保証はないけど」  俺は持田先輩の手を離すと、バイバイ、と小さく手を振った。 「じゃ、俺、時間だから授業行くね」  肩越しに顔だけ振り返ると、持田先輩はそのまま動かず、確かめるように窓の外を凝視していた。  俺はひどく底意地の悪い気持ちになり、教室を逸れてその先の階段を下りた。  裏の出入り口は誰もいなかった。  持田先輩の下駄箱を探して蓋を持ち上げ、見慣れた靴を確認する。    俺は背中のリックを降ろすと白い封筒を取り出し、望月和真の名前を上にして、靴の上にのせた。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

880人が本棚に入れています
本棚に追加