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俺はコタツ布団を引き上げた。ばあさまは頬杖をついた姿勢で軽く睨んできた。低く、諫めるような口調で続ける。
「大人しくしてるって、約束だったろ」
「ごめん。和真も絡んでたから、ちょっと我慢できなかった」
「あんたの唯一の執着か」
「そうだよ」
悪びれずに答えた。
小さい頃から和真の話をするたびに、ばあさまは珍しそうにつぶやいた。
……あんたにしちゃあ、えらくご執心だ。
だからたぶん俺の気持ちも察してるんだろう。どっちみち、このばあさまに誤魔化しは通用しない。
「困ったね」
「別に大丈夫だよ、受験に合格したってだけだもん。確かに学校の反応は凄かったけど、もう卒業したしさ。いまどき、みんな他人のことなんかすぐ忘れる」
俺は、ばあさまに笑いかけた。ばあさまは、また溜息をつく。
ばあさまと俺は、小さい頃から時々、こうして二人きりで話をしてきた。俺が唯一、隠し事なしでいられるのはこの場所だけだったし、あの告白以降、ばあさまは俺に一切のごまかしをしない。そこが気楽だ。
多機能な割に、俺の性格は単純にできている。研究者の人もそこまで作り込む余裕がなかっただけかもしれないけど。
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