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「なんかあいつ、小さい頃からやたらと俺の動向、気にしてるんだよな。薄々何か感じてるのかもしれない。ガキのくせに勘もいいし」
ばあさまは上機嫌に微笑む。
「あの子はちょうどいいね。あんたとは比べものにはならないが、小利口でしぶとさもある。いづれ『浅野』もやれるだろう。瑞樹も駄目なら、いよいよあんたに頼むしかないと思っていたけど、このまま順当に育てば、どうにかなりそうだ」
「跡継ぎ育成は、ばあさまの悲願だからね。お役御免でちょうどいいよ。こんなでかい家なんてしがらみばっかりだ」
「心配しなさんな。あんたにはやらないよ」
ばあさまは、不敵に撥ね退けた。俺は首をのばしてくってかかる。
「だからいらないってば!」
「それで結局、どうするんだい。ここを出て、当てはあるのか」
俺の返事を無視して、ばあさまはいきなり本題に入った。俺は頷いた。
「うん。俺、写真家の先生んとこに行こうと思う」
「写真? またいきなりだね。なんでそういう事になったんだ」
さすがのばあさまも虚をつかれたらしく、小さかった目が見開かれる。
「ちょっと成り行きに流されてみようと思って。ほら俺、小さい頃から未だにあちこちフラフラしてるじゃない。つまり新しい景色を見るのが好きなんだと思うんだ。知らないところに行ってみて、違う世界を見つけるのが。それが本業になれば最高でしょ」
「ああ、いつもの探検ごっこ」
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