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ばあさまは、俺の趣味も熟知している。俺はようやく醒めてきたお茶に手を出した。
「それそれ。で、行った先でいつも写真とって、瑞樹に見せてたんだけど、その写真をさ、コンクールに出してみたんだ。いや、おかしいんだよね。俺、あの頃、出すかやめるか悩んで、捨てたはずだったんだけど、何故か応募されてて。そこから連絡がきたんだよ」
「なんだ、そっちの才能もあったのか」
ばあさまは呆れたように言った。
「いや、賞はとれなかった」
「そいつはいいね、何でもできるより可愛げがある」
ばあさまが愉快そうなので、俺はわざと重々しく言う。
「だけど、審査員の写真家の先生から連絡がきて、アシスタント探してるから来てみないかって誘われたんだ。俺の写真、未熟だけど面白いとこもあるから、勉強する気があるならこい、って」
「信用できるのかい」
疑わしそうなばあさまに、俺は自分の事のように、自慢げに言った。
「写真集、何冊も出してる人だよ。芸術大賞みたいな大きな賞もとってる。その先生、ライフワークは自然とか景色なんだよね。秘境みたいなところ。だから、撮影についていけば探検も同然だと思うし、そういうの俺の性分と合ってると思う」
ばあさまは瞼の奥の光る眼で、珍しく俺の顔をじっと見つめた。
「家の方には話したのかい?」
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