12.春の風……涼太

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「言った」  俺はきっぱりと答えた。ばあさまは間髪入れずに問い返した。 「どこまで話した」 「大丈夫だよ、ばあさまとの約束には触れてない」  俺は昨日の修羅場を思い出して少し顔をしかめた。 「一応さ、今回、受験にはちゃんと取り組んでみせたから、それを引き合いにしたわけ。本気で勉強してみて、逆にこれが俺のやりたいことじゃないって分かった、って言い切っちゃた。瑞樹はぎゃあぎゃあ騒ぐし、父さんは卒倒しそうだったけど……まあ、家から出ちゃえば、嫌でも納得するしかないでしょ」 「……そうか」  ばあさまは、着物の懐からカードを取り出して俺に押し付けた。俺名義のキャッシュカードだった。 「餞別だ。もっていきな」 俺は激しく首を横に振った。 「いらないよ」  ばあさまに返そうとしたけど、有無を言わさぬ力でまた押し付けられる。 「あんたはどこでもやっていけるだろうけど、持っていて邪魔になるもんでもない」
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