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瑞樹は目を見開いた。怒りから驚愕への顔付きが変わる。
「……何でだよ」
「人の手紙を勝手に読むような真似ができるか!」
今度こそ瑞樹はあんぐりと口を開けた。
「知りたかったんだろ。和真の本音が覗けんのに見もしなかったって?」
「和真が俺に書いた手紙なら読む。だけど、これは俺じゃない相手に向けて書いた言葉だ。それを盗み見てどうしろっていうんだ。それよりこの手紙を涼太は読んでるのか。それとも読むまえにくすねたのか。どっちだ、答えろ」
「どっちだってあんたに関係ないじゃないか!」
瑞樹はふてくされた態度で怒鳴ると、また逃げようとした。
俺はコートの前立てを引っ張り上げ、もう一度、壁に押し付けた。ガツンと鈍い手ごたえがして瑞樹が顔をしかめる。
額がすりあうぐらいに近かった。俺は暴れる犬をしつけるみたいに凄みを効かせて言い聞かせる。
「大事なことだ。こんなに厚い手紙を書くなんて、よっぽど伝えたいことがあったんだ。それを故意に邪魔するのがどんなにタチの悪いことかわからないか」
瑞樹は瞬きもせずに前髪の隙間から俺を凝視していた。
「……どこまで委員長ヅラしてんだよ」
「なに?」
「優等生ぶるなって言ってんだよ!」
瑞樹は噛みつかんばかりに怒鳴った。
「俺、知ってるんだぞ、ずっと和真のことチラチラ見てたじゃないか。俺と話してたのだって和真の事聞きたかっただけだろ? 俺はあんたにチャンスをくれてやったんだ。偉そうなこと言ってないで、涼太みたいに和真を抱けばいいんだよ!」
「……!」
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