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「そっちこそ何だっていまなんだよ!」
俺は焦るあまり、八つ当たり気味にとんちんかんなことを言った。人の気も知らず、和真が近寄ってくる。
「だって買い物ぐらいするでしょ。ここ、家から一番近いコンビニだし」
和真は涼太の弟と俺との組み合わせの不自然さに、なおも訝し気にこちら側を覗き込んだ。
こんな時なのに、まだ瑞樹はしゃくりあげている。しかも足元には眼鏡や荷物が落ちていて、どうみても俺が脅してるようにしか見えない。
俺は無理を承知で、全てを隠そうと、とっさに瑞樹の前に出た。その拍子に力が入って、手の中の手紙がぐしゃりと曲がる。
皮肉にもその音で和真は俺の手に目をやり、封筒を見付けて形相が変わった。
「これ」
和真がびっくりするような素早さで手を伸ばした。俺の手から手紙がもぎ取られ、和真は改めてその封筒を確認すると、青ざめた顔を俺たちに向けた。
あの図書室で見た時と同じ、黒い宝石みたいにぎらぎら光る瞳は、当然、俺たちを責めていた。燃え上がるような双眸が俺たちを貫く。
ひくっと、喉を鳴らして、俺の後ろで瑞樹が大きく息を吸った。
またこの馬鹿が自暴自棄になって、ろくでもないことを暴露しそうな気がした。いや、本当にそう思ったか自覚はない、ヤバい、と思ったのと俺の体が動いたのは同時だ。
いきなり言葉が出ていた。
「和真、ごめん!」
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