13.春の嵐……洸

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 俺は瑞樹を押さえていた手を離した。  なんでこいつをかばったのか、自分でもわからなかった。  さんざん裏表を見せられて腹を立てていたくせに、それでもさっきの涙を嘘とは思えなかったからかもしれない。  手を離したのに頭を下げたまま、瑞樹はようやく、ごめん、と言った。  その謝罪の声はあまりに小さくて、意地やプライドや、恥ずかしさに邪魔されてようやく絞り出した感じだった。優等生ヅラしてたのはどっちだ、と俺はまた説教をしたくなる。中学生どころか、やってることは小学生の悪ガキだ。 「……もう、いい」  和真は色々を呑みこんで、そのまま俺たちに背を向けた。  思わず俺が足を踏み出すのと同時に、瑞樹が動いた。腕で荒っぽく顔を拭くと、和真の袖を引っ張る。 「待って。その手紙、俺、涼太に届けるよ。責任とらないと」 「いいよ、離して」 和真は顔を背けた。だが瑞樹は食い下がった。 「まだ、駅にいる。乗る予定の電車あと少し時間がある。走れば間に合う」 「駅……なんで?」 和真はさらに大きく目を見開いた。 「涼太、就職で上京しちゃうんだよ。このままもう二度と会えなくなるかもしれない。嫌なら、手紙だけでも俺が届ける」
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