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瑞樹は和真の手紙を掴もうとしたけど、さすがに和真はその手を払った。
「聞いてない、涼太は俺に、なにも」 和真は頭を振った。
だけど、瑞樹はそれにはかまわずに、すぐに落ちていたカバンと眼鏡を拾って、和真の腕を掴んだ。
「急に決まったんだ。俺も大学に行かないって聞いたのは昨日の話だし、大反対で喧嘩した挙句、今日学校から帰ったら、写真家の先生から連絡入ったからもう行かなきゃ、って荷造りしてるし。さすがに頭にきて、勝手にしろって怒鳴って家を出たところだったんだよ」
どうりで荒んでいたわけだ、と俺は内心で合点する。瑞樹は和真に尚も強く言った。
「和真も涼太もさ、二人ともしばらく連絡とらないようにしてただろ。だから色々行違ってるだけだよ。この手紙もそうだし。……まあこれは俺が悪いんだけど」
瑞樹はそこだけ、急に歯切れが悪くなった。
「でも、だからこそこの手紙、和真が直接渡すのが一番いいと思う。走ろう。ほら先輩も」
「何で俺」
思わず文句を言うと、瑞樹は早くもさっきまでのふてぶてしさを取り戻し、偉そうに俺を一瞥した。
「ここに残ってたってしょうがないでしょ。早く、和真のこと引っ張って」
「だから何で俺が」
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