14.夏の気配……涼太

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 あの頃、いよいよ進路を決めなきゃならなかっただろ。  親には内緒だったけど、家を出ることは、昔からの約束だったんだ。うちのばーさんとね。  ただその方向が定まらなかった。  本当は旅をしたかった。  どこまでも行けるとこまで。子供の頃から資金は投資で増やしていたから、旅費の心配はなかったけど、さすがに全国を回るとなると未成年では不自由なことも多い。それに逃げてるって思われるのも癪だったし。  写真家の先生のアシスタント業は、俺にとっては渡りに船だった。写真も好きだけど、あちこち行けるのがいい。だから今は楽しいよ。念願だった違う景色を毎日みてる。  和真は何度も『なんで俺を好きになったの?』って、聞いたよな。  『何故、俺なの?』って。  これがその問の答えになるだろうか。  人の気持ちを形にして差し出すことはできない。  だから、あとは、和真が信じるか信じないかだけなんだけど。  何回聞かれても、同じ答えになるけど、俺は和真が好きだよ。
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