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俺は、自分の出生の関係で、小さい頃から決めてたことがある。
一生、結婚はしない。
俺の遺伝子をこの世界に残したくないんだ。だから世間一般的な人生のルートを歩む気はさらさらなかった。生まれた時の経緯からすでに、常識から逸脱しているわけだから、俺自身が納得できる生き方をすればそれでいい、って思ってた。
でも、生涯にただ一人。たった一人でいいから、好きだと思える人が欲しい。
風来坊になって地球のあちこちを彷徨っていても、この先、年をとってその世間的な幸せという奴が、痛いくらい眩しく目に映るようになったとしても、年老いてどこかの片隅で野垂れ死ぬはめになっても、心の中に本当に好きだと思える誰かがいれば、俺は決して寂しくなんてならない。
人は本当は、絶対的に一人だろう?
普段は忘れてるだけで、生きるも死ぬも、その運命は俺自身がどうにかするしかない。
だけど、その孤独を突き付けられる局面が訪れた時、そんなとき、その人を思い描けば、闇に灯りをともしたように救われる。
そういう存在が切実に必要だった。
俺にとって、それが和真だ。
あの夏の庭から、俺は、そう決めたんだ。
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