15.ふたたびの夏の庭……和真

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昨夜、かなり遅い時間だった。 携帯に涼太の名前が浮かぶ。俺は知らず、飛びつくように電話をとる。 「和真、元気?」 涼太の電話は、向こう側の涼太が笑ってるってわかるほど明るい声ではじまる。 「いつもどおりだよ。結構、カリキュラムが詰まってて、勉強三昧。そっちはいまどこ?」 耳にあてて聞く涼太の声は近かった。まるで傍にいるみたいだ。 だけど実際は、とても遠い。 あの春の浅い日に涼太を見送ってから、ずいぶん経ってよれよれの手紙が届き、その後、またしばらく空いて携帯が繋がるようになった。 その連絡も時差のせいかいつも唐突で、大抵、国外だった。だから俺は、電話がくるとまずどこにいるのか尋ねる。  涼太の声はいつになく明瞭だった。 「いま、成田。たぶん、明日そっちに行ける」 馬鹿正直に、心臓が跳ね上がった。 「だいじょうぶ? この間は即、出立だったじゃない。メキシコだっけ」 「そう、先生がグアナファトの街並み撮りたいって言いだして。あんときは、せっかく日本に戻ってきたのに、携帯の手続きしかできなかったからなー。ごめんな、約束やぶってばっかで」 「いいよ。写真、見た。クレヨンを並べたみたいな色彩の建物が可愛かった。夜景もいい」 俺は、期待しないように、自分を抑制する。 「今回は大丈夫。言われる前に逃げるから! 庭で待ってて。和真、一日授業だろ。俺の方が先かもしれない。着いたら連絡する。七夕だからさ、一緒に星をみよう」
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