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3 秋の部屋……和真
あの夜、雨音で目が醒めると、部屋は真っ暗だった。
枕元の携帯を手に取る。もう、夜の八時だ。俺は軽く頭をふった。薬がきいたのか、かなり熱も下がってる。ベッドから抜け出して、目をこすりながら部屋を出た。
「和真―、起きた?」
「ちょ……なんでいるの?」
「何でって、そもそも帰るなんて言ってないよ俺」
当たり前のように涼太がリビングでテレビを見てる。驚いた俺に涼太は首を傾げた。
「よかった、顔色いいじゃん」
屈託なく笑う。
高校生になっても天真爛漫な雰囲気は相変わらずだ。丸くて大きな目と、よく変わる表情。人好きしやすいピカピカの笑顔。得だなと思う。
ガキ大将気質の涼太は、いたずらしたり無鉄砲な馬鹿をやるのはしょっちゅうで、怒られるたび『俺、あんま学習能力ないんだ』って照れくさそうに笑った。そうは言っても、涼太は別に頭が悪いわけじゃなくて、成績がふるわないのは単に勉強しないせいだってことを俺は知ってる。
「何か食べる?」
キッチンに立とうとする涼太を、俺は腕組みして睨んだ。
「とっくに家にいるべき時間だろ。早く帰りなよ」
「泊まるって連絡したから大丈夫。パジャマも瑞樹に届けてもらったし、ついでに母さんからの差し入れも持って来てくれたし」
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