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「それよりさ、おなか減らない? いろいろおかずあるよ」
「動いてないし、食べなくていいよ」
今度は涼太が、これみよがしに溜息をついた。
「ほーら、そんな調子だから俺がいた方がいいんだよ。お前、また倒れるぞ。三日も寝込んでるくせに、全然頼って来ないなんて俺、ちょっと傷ついたかんな」
「だからどうして」
何の気なしに言ったのに、涼太は初めて立ち上がって俺に近づいた。
ごん、と俺の胸に頭突きする。
「わかんないふり、わざと? 理由、さっき言ったじゃん」
「……」
涼太の手が俺の腰に巻き付いた。どきりとする。
――――――――――――あの庭に全部おいてきたはずじゃなかったのか。
俺たちは何もなかったように学校に行き、普通に振る舞い、多少の親し過ぎる様子も幼馴染の一言で誤魔化してきた。
息が苦しくなる。
恐れていたことを見抜かれたようで焦りながら呼吸を整える。
「勝手な事はしないよ。てか、和真がその気になるまでは」
涼太は下を向いたまま言った。
俺はツッコミたいのを堪えた。さっきのキスをどう言い訳するつもりだろう。
「でも俺、またしたいんだ、って言ったら、どうする?」
どうする?
俺は頭に響いたその声が、自分の中で幾重にも反響しているのを感じた。
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