4.冬の町……和真

2/14
前へ
/250ページ
次へ
 瑞樹は勝手知ったる感じで、机の棚にある英和辞書をつかむと、俺と涼太に交互に視線を走らせ、そのままテーブルの一角に座り込んだ。 「いいなー、俺も勉強教えて欲しい。和真の説明わかりやすいし」 またもや俺と涼太が同時に答える。 「いいよ」 「駄目!」 俺と涼太は顔を見合わせた。 「なんで? 一人も二人も一緒でしょ」 「大違いだよ!」 瑞樹はまるで楽しんでるかのように俺たちのやり取りを聞き、テーブルの上に出ていたせんべいを齧り出した。 「なんでそこで落ち着くんだよ」 「いいじゃん。それよりこれ、しょっぱいから喉乾く。お茶飲みたい。お茶くれたら自分の部屋に戻るよ」 がみがみ言われても全く余裕なのは、何のかんのと涼太が自分に甘いことを知っているからだ。ちょうど俺たちのお茶も底をついていて、ぶつくさ言いながらも涼太は一階のキッチンにお湯を沸かしにいった。  涼太が部屋を出た途端、瑞樹がせんべいを口から離す。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

874人が本棚に入れています
本棚に追加