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「ねえ兄ちゃん、真面目にやってる?」
「んー、さすがに落第はまずいと思ってるみたいだけど、相変わらずどっか適当」
「やっぱね」
瑞樹は頬づえをつくと、テーブルの一点を凝視した。数秒の沈黙のあと、思い切ったように口を開く。
「あのさ」
俺は参考書から顔を上げた。声の響きがいつになく真剣だったからだ。
「涼太と俺、似てないって思ったことない?」
何を言ってるのかわからなかった。
「和真、転校生だし、親関係の交流もあんまなさそうだから、たぶん知らないよね。涼太がもらいっこだって」
喉が張り付いたように黙りこんだ俺に、瑞樹は理解を促すように頷いてみせた。
「うち、ずっと子供ができなくて、でもどうしても欲しくて施設から涼太をもらい受けたんだって。だから当時ここら辺にいた人はみんな知ってる。急に赤ん坊が来たんだからそりゃわかるよね。で、それで終わりならよかったんだけど、しばらくして俺が出来ちゃったんだ。まさかの大誤算」
瑞樹はばつが悪そうに肩をすくませた。全然、瑞樹はわるくなんてないのだが。
「涼太はそれを知ってから、何事にも本気だしてない――――――と、思う」
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