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あんな風に涼太の躰は躍動するんだ。
俺はどきどきしながら網膜に焼き付いたその残像を再生させる。
それまでの追いかけっことは比べものにならない身軽さだった。雪が地上に吸い込まれるまでの束の間の動きは、体育の授業でも運動会のリレーでも、見た事がなかった。
きっとそれが瑞樹の言う、本気のときの涼太だ。
俺は転校してから涼太とずっと一緒にいる。だけど、一緒にいることと、全部を知ってることは違う。
幼馴染だから、俺は、涼太がやらかしたイタズラも、先生に怒られて立たされた時のことも、女の子に告白されてしどろもどろになっていたことも知っている。
涼太の好み、よく聞く曲。お気に入りの服。話し方のくせ。
成長と同時に積み重なっていく記憶。俺たちはそのほとんどを共有している。
涼太は友達が多かった。あの明るさと能天気さに惹かれて人が集まってくる。人の輪の中にいる涼太はいつだって楽しそうだった。
あんなに友達が大勢いるのに、なんで俺が親友と呼ばれているんだろう。
俺にはこれっぽっちも自信がなかった。
俺の生活には、すでに涼太が深く食い込んでいて、当たり前のように登下校も授業も一緒だった。だけどもそれは、始まりの時からずっと、あっちが無理やり追いかけてきているだけで、俺は追いかけられている方だ。
すでにその砦を壊され、友達になり、親友と呼ばれ、あっけなく懐柔されているくせに、俺はその全部を涼太から押し切られたせいにしていた。俺のプライドはそこで辛うじて保たれる。
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