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そんな風に平然を装いながら、涼太の視線が俺から外れると、ぞわぞわと落ち着かなくなった。この苦さは、俺の場所に別の誰かが入り込むことに対する嫉妬だ。
でもこれじゃまるで、俺の方が追いかけてるみたいだ。
そんなはずじゃなかった。
本当の親友なら、涼太の世界が広がることを喜ぶべきだった。俺はいい友人ですらない。自分の気持ちを俺は強く打ち消した。
なのに。
「和真って、いつも涼太のこと見てるよね」
放課後、涼太の帰りを待ってる時だった。
俺はまだ校庭で駆け回る涼太を窓から見ていた。クラスメイトの何気ない言葉に、俺は図星を突かれて強張った。
俺は無意識でも涼太を目で追いかけている。
その眼差しを周りに悟られるほどに。
『内緒だよ』
『今ならまだ、単なる思い付きとか偶然とかで済ませられるから』
あの夏の庭で、俺は動揺をかくして、いつも以上に落ち着いた声で言った。これ以上の存在になるなんて、俺には無理だと思った。
隠し切れなくなる。セミと同じぐらいの音量で頭の中で警笛が鳴った。
なのに、どうして追いかけてしまうんだろう。自分で逃げたくせに。
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