4.冬の町……和真

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 涼太の親友というポジションは、ほんのわずかでも空ければ、たちまち誰かに攫われていくだろう。今はまだ、同じ学校で同じクラスだから「俺」っていうだけだ。  この先、涼太の世界も、俺のも、広がっていけば、すぐにまた次の誰かがその位置に納まるに決まっている。  それを見ていられるだろうか。  友人のままならともかく、恋人みたいな近い位置になったとき、その場所を離れた位置から眺めることに耐えられるだろうか。  きっと無理だ。  こんな焼け付くような想いをなかったことにするのは無理だ。  俺は雪道を歩きながらその背中を見て、思い切る。  こんな決意を知られたくはないから、ずっと無言で歩き通す。  雪が解けて春がきたら、世界は剥き出しになるだろう。  その世界で何を見るのかはわからない。今とさほど変わらないかもしれないし、おぞましいものが剥き出しになるかもしれない。  でもこの雪の中を二人きりであるいていると、まるで今がすでに、辿りついたその最果てであるような気がした。
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