5.春の夜……涼太

2/9
前へ
/250ページ
次へ
「はっきり誘いなよ、子供じゃないんだから」 「お前が言うか!」 俺は瑞樹の麦茶を奪い取り、これみよがしに飲んだ。  こういうガキっぽいことをするからどんどん瑞樹になめられるのだ。わかってるけど性格だからしょうがない。  案の定、瑞樹はことのほか大人っぽく肩をすくめてみせる。 「たぶん、精神年齢は兄ちゃんより上だよ。この間さ、学校帰りに会ったじゃん。俺、部活の連中と一緒だったでしょ、あの後、みんな和真のこと言ってたよ、すげえ美形って」 俺は嬉しいような、不愉快なような、複雑な気分になった。 「別なクラスじゃ目が届かないし、危なっかしくてしょうがないよね」 しっかり!、と担当教師みたいに俺の肩を叩いて、瑞樹は自分の部屋に戻る。  そんなのわかってる。  蕾だった花が開くみたいに和真がやたら綺麗になってきたのも、その和真が自覚なく注目を集めてしまうのも。  だから不機嫌なんだ。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

880人が本棚に入れています
本棚に追加