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和真も汗ばんでいた。俺が手渡した水筒をつかむと、そのまま口をつけてごくごく飲んだ。その白い喉が上下するのを、俺はぼんやり見惚れてた。
「ねえ、ここさ、一人じゃ大変だろ。俺いつでも手伝うよ」
ここでは本当の和真で会える気がしたから、俺は身をのりだすようにして提案した。
「大丈夫だよ。俺の仕事だし」
和真は案の定、やんわりと断った。でも、俺はここで、和真が一人で寝っころがったり、縁側で本を読んでいたり、木にもたれて風に吹かれている姿が見える気がして、どうしても一緒にいたかった。そういう和真をもっとちゃんと知りたかった。
残念そうにうつむいた俺に気を遣ったのか、和真が急に話題を変えた。
「俺ね、涼太はいつも笑っていて、それがすごくいいと思う」
「俺が?」
「うん。涼太が笑ってると安心する。ほら、俺たち幼馴染だから小学生から、しょっちゅう同じクラスになってきたじゃない。でもどのクラスでも自然に涼太がリーダーみたいになっただろ。それって、やっぱり涼太と一緒なら、笑っていられるような気がするからじゃないかなって」
「えー、俺、何にも考えてないよ」
「それはそうなんだけど、でも、毎日って本当はさ、楽しい日や良い日ばっかりじゃないじゃない。なのに、いつも涼太はそんなのへっちゃらで、何もなかったみたいに笑ってるだろ。それって強さなんじゃないかなって俺は思うよ」
和真が一言一言をゆっくりと真面目に言うから、俺は何だか照れてしまい、足をぶらぶらさせた。そしたら、あんまり勢いよく足を投げ出したので、ブン!と勢いがついて靴が草むらに飛んで行ってしまった。
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