6.春の夜……和真

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「もう我慢しないでいいんだよな」 熱の籠った声が耳元で囁いた。涼太の腕の力がさらに強くなる。 我慢ってなんだ、と俺はさらに自問する。我慢ならずっと―――――――俺だって、ずっとしていた。 「和真」  身動きを許さないまま、今度は涼太の方から口づけをしてきた。思わず息を止める。目を閉じて真っ暗な世界で、柔らかな唇の感触に溺れていく。  俺はあっという間に押し流された。 何度も交わされる口づけは、どんどん荒々しくなる。苦しくなって思わず目を開けると、視界の中心に涼太が居た。  涼太の眼差しが、今日は一層強く光を放っている。  涼太の指がそっと俺のボタンにかかった。慌ただしく前が開いて、引きだした中のTシャツの内側に手が滑り込んだ。手のひらが直接素肌に触れる。  すかさず指先は胸のほうに動く。 「あ……一気に全部までは」
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