6.春の夜……和真

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 俺は思わず泣き出しそうな声を出した。  見ないでもわかる。耳朶まで一気に血が上った。  だけど、涼太は無視してその大きな手のひらで俺の胸を撫でる。その触れ方で、涼太が本気なのだと悟る。 「……ごめ、やっぱりその……今日はそこぐらいまでで」 俺は腕を突っ張って、無理やり涼太を身体を引きはがそうとした。だけどその程度の力では涼太はびくともしなかった。羞恥のあまり俯いた俺の首筋に、吐息ごと唇を押し付ける。 「止まるわけないだろ」 その口調があまりに揺るぎなくて俺は息を呑んだ。涼太はぴったり身体を添わせていた。 「ずっと待ってたんだ。やっと掴まえたのにやめるわけない。無茶苦茶いうなよ」 強引に抱きしめてくる身体は火照っていて、すでに摺り寄せて触れてくる部分が硬い。涼太の口調は訴えるように切羽詰まっていた。 「だけど……庭が見てる」 「庭だって知ってる。ここから始まったんだ」 ぐるりと視界が一転して、天井になった。涼太は俺を腕で支えながら、なだれ込むように体重をかけてくる。 「あ……、っ……」 「和真」 今までのどのキスよりも深く涼太が唇を押し付けてきた。
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