6.春の夜……和真

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「涼、」  涼太の五指が太腿にくいこむ。容赦なく体を開かされる。  思わず悲鳴に似た喘ぎが零れた。  俺は涼太にされるがままだった。喪失感にひくついた部分を探るように、あてがわれたものに恐怖が走る。 「和真、いくよ」 「馬鹿! そんなの、口にだすな」  もはや今さら嫌だと言う気はなかった。  結局、最後に誘ったのは自分の方だ。  涼太は待っていた。たぶん、ずっとずっと待っていた。  涼太のいう事が本当で、出会ったときから、俺を好きなのだったとしたら、信じられない忍耐力で待ち続けていたのだ。  あの夏の日に涼太がフライングして以来、リミッターをはずすタイミングは俺に委ねられていた。  友達のままでいる選択肢もあったかもしれない。  でも、俺も気付いてしまった。奥底に潜んでいた欲望に。
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