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「あーもう、何やってんだよ子供かよ」
たぶん、言った和真の方も恥ずかしかったのかもしれず、すぐに立ち上がって靴を探し始めた。俺も慌てて、けんけんで近くまで寄る。そこいら辺はこんもりと草が繁っていてすっかり靴が隠れてしまっている。
「あ、これかな」
「どれ?」
和真が屈んで手を伸ばしたから、俺も一緒になって見ようとした。でも片足だったからバランスを崩してぐらっと体がななめに傾いだ。
「涼太!」
和真は全くためらわず俺を横から抱きかかえた。
でも、俺の体重がそっくりかかったから、支えきれなかった和真もろとも転んで、二人して地面にしゃがみ込んだ。
ぴったりくっついた和真の体は熱く湿っていた。頭の芯がくらっと痺れた。
ずっと遊んできたけど、こんなに肌を合わせたことはなかった。だから俺は柄にもなく息を呑んで、そして、成り行きに逆らわなかった。だって覗き込むように額を突き合わせてる二人の間は、唇までほんの数センチだったんだ。形のいい茜色の唇が戸惑って薄く開いている。それは触れずにはいられないぐらい近くにあったから。
だから。
ぎゅっと押し付けて、ぱっと離した。
「……どうも涼太のすることは予想がつかないな」
和真は両手を地面についたまま、茫然とつぶやいた。いつも冷静な和真が、呆気にとられている顔が可愛らしすぎて、俺は笑み崩れた。
「あとで怒られればいいやと思って。すごくしたくなっちゃったから」
「怒らないけど、驚いた」
「俺も!」
間髪入れずに俺は言った。そのあっけらかんとした即答ぶりがおかしかったのか、和真は苦笑した。だけど一拍の間の後で、ふいに真面目な顔になった。
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