7.夏の夕暮れ……瑞樹

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 涼太が頻繁にいなくなるようになったのは、この直後だ。  いなくなると言っても、家出とかじゃない。ふらっと出かけて、夕方、門限のぎりぎりに帰って来る。  友達が多かったから、その誰と遊んでいるのかも特定できない。それまでは結構、俺とも遊んでくれたのに、気付くといないから俺は寂しくて仕方なかった。  両親は両親なりに思うところがあったようで、とにかく週末は家族でどこかに遊びにいった。  遊園地、公園、映画、野球場、旅行。もらいっ子の話は一切出なかったけど、きっと俺たちは家族なんだと、涼太に全力で伝えようとした結果があれだったんだと思う。  涼太は誰よりもはしゃいでいたし、すごく楽しんでいた。でも、抜群だった成績も運動も、見事にすっぱりと抜きんでる事をやめて平凡になり下がった。 『学年上がるとさー、難しくなるんだよ』 全く、痛手も反省もない明るさで涼太は弁解する。 俺から言わせれば、明らかに力を抜いていた。 何食わぬ顔で俺たち家族と自分との違和感を見極めていたように、涼太は本心を自分の中に沈めている。  家族旅行も、両親も、俺たちは一緒にいると、不自然に神経を使い過ぎている。  じゃあ、一人の時は?  涼太は一人でどこに行ってるんだろう。
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