8.秋の嵐……涼太

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 和真は植物が好きだから、いずれ研究職につくつもりで理学部のある地元の大学を狙ってる。  けっこう大きな大学で、学部によって難易度はバラバラだ。理学部はけっこう難しい。委員長は俺の成績で和真と同じ学部なんて入れるわけないって思ってるんだろう。  そしてそれ以上に、和真の事が気になってるんだと思う。    最近、この手の絡まれ方をすることが時々ある。いっつも一緒で飽きねえの?、とか、お前らべったりだな、とか。  それは、小学校とか中学校の時の幼稚な揶揄いとは違って、雄の匂いのする嫉妬だった。あからさまに言えないのは、俺に友人が多くて露骨に嫌味な態度に出られないのと、一応、和真とだと男同士になるから自分でも認め切れないんだと思う。    和真に惹かれるタイプは大抵、共通してる。  高嶺の花に憧れて、声もかけられないくせに勝手に思いを募らせるようなガリ勉タイプだ。真面目で、プライドが高くて、自分の欲望すら正直に認められない。    和真の隣にいるから、俺はその熱のこもった視線にすぐ気付く。わかってないのは当の和真ぐらいだ。あの無関心はすごい。で、奴らは結局、和真には何も言えないから、俺にあたる。  くだらない。  ベッタリしてないとお前らが手を出しかねないだろうが、と俺は内心で笑う。  おっっそいんだよ。  俺は誰にともなく、言ってまわりたい気分だった。
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