8.秋の嵐……涼太

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 和真がどんどん綺麗になるのも、そうなればいくら教室の片隅でひっそりしていたって見つけ出されてしまうこともわかってた。    だから、そうなる前にどうしても和真を自分のものにしたかった。  俺は浅野の家を出るまで、何も望まないって決めてたけど、和真のことだけは待てなかった。 待っていたら他の誰かにさらわれてしまう。和真の方が誰かを好きになることだってある。そんなのは絶対、嫌だった。  強引だったのは自覚してる。だけど、俺は急いだ。  どのみちどこかのきっかけで、去年の夏みたいな事になったと思う。強気で押さないと、和真には通じる気がしなかった。こんな風に深まって余計にわかる。大人しさとか、落ち着きとかじゃない。あのひっそりと人から離れている感覚。  和真はすごく、閉ざしている。  なんで俺なの?  今でも和真は聞く。
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