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帰りたくないのは、雨のせいだけじゃなかった。
起き抜けの和真はぼんやりしていて、俺の腕の中に素直に収まる。いくら周りにベッタリと揶揄されても、さすがに学校では手も繋げない。だからこんなふうに和真とくっついていられる時間は俺にとって格別だ。
調子にのって和真に頬ずりしてみる。すりっと頬にさわると、嫌がらないどころか腰に触れていた腕が俺に強く巻きついてきた。
「ん? どした、やっぱする?」
「……すぐそういうことを言う」
「だって、その気になるだろ、そういうことされたら、さ」
俺は甘噛みするように和真の首筋に唇で触れた。
くすぐったさに和真の肩がすくむから、ついつい楽しくなって何度も繰り返す。しばらくふざけていたら、和真はやっと目を開けた。
笑ってる。
思わず可愛いなあ、と口にだして、和真に涼太ってホント変わっている、とたしなめられた。いつものことなのに毎回照れるのが和真らしい。
「やっぱ駄目。勉強、しないと」
「いいじゃんもうちょっと休もうよ。あんま寝てないだろ」
「塾とか行ってるわけじゃないから、全部自分で積み上げなきゃならないんだ。今日のノルマ、全然終わってない」
「真面目すぎ。そんなにやってんの」
起きようとする和真の邪魔をして、体を触る。
するのは勿論いいけど、こんな風に布団の中で話をしてる時間も好きだ。柔らかな声音で囁かれるそれは、優しくて静かで、雨よりも体に染み込む。
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