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「涼太が楽天的すぎるんだよ。いつも楽しそうなのはいい事だけどさ」
「うん、俺、すげえ楽しいよ」
俺が笑うと、和真もつられて困ったように微笑んだ。俺は和真の冷えた頬を片手で包み込む。
「前も和真、そう言ってくれたけど、あれって半分合ってるけど、半分ハズレ」
「なにそれ」
「俺、和真といると楽しいから、いつも笑ってるように見えてるんだと思う。和真が俺の笑ってる顔しか知らないだけなんだ。だって俺、怒る時も機嫌悪いときも普通にあるもん」
「へえ。俺の言ったこと覚えてたんだ」
和真は見当違いなところで感心している。
「そりゃ覚えてるよ。めったに和真に褒めてもらえるなんてないから」
それでのぼせあがって、余計にあんなふうに弾みがついたんだって、そこまで言いそうになってやめる。真っ黒い瞳で俺を見つめる和真が不思議そうに瞬きをする。
「……最近思うんだけど、涼太って子供っぽいふりしてただけ? 俺に関してだけなの? そのなんでもわかってるみたいな感じ、なに?」
いきなり鋭いところを突いてくるから、俺はそのまま笑って誤魔化した。和真は前髪を掻き上げる。整った顔が露わになって、長いまつ毛のせいで目元に影ができる。
解けない問いにあたると、和真はどっか遠い処を凝視する。集中していると目の光が強くなって、俺は、その瞳が宝石みたいに瞬くのに見惚れてる。
俺はふいに子供の頃を思い出す。
あの時も同じだった。迷う眼差しが綺麗すぎて、かける言葉もみつけられずに、お預け状態で隣でただ座ってた。
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