8.秋の嵐……涼太

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「涼太こそ勉強いいの? 模試、すぐだよ」 和真はぼんやりしてる俺に、現実を突きつけるみたいに鋭く言った。 「別にいいよ、わかるとこだけ書く」 適当な俺の答えに和真はあからさまに眉を寄せた。 「高校受験の時みたいに上手くと思ったら甘いからな。学部によって開きがあるとはいえ、最低でもそこそこの偏差値あるよ、あの大学」 「あー……うん、まあ、それは知ってる」  和真はむっくり体を起こして、俺を見下ろしている。俺の反応の鈍さに、いらだちをそのままぶつけてきた。 「今の俺は、涼太に勉強を教えるほど余力がないんだ。もうちょっと自力でやる気出さないと、大学、一緒に行けなくなるぞ」  俺も起き上った。一方的にまくしたてられて、いつも沈めておく胸の奥底の感情が波立っていた。いや、違う。勝手に決めつけられることの全てを、俺はずっと嫌悪していたから。 「ねえ、何で? 俺、和真と同じ大学行くって言った覚えないよね」 「え?」  和真は、一瞬、虚を突かれたように固まった。 「だって、委員長が……洸、進路調査、お前と涼太、また一緒なんだなって」 「何だあいつ、人の進路、勝手に」  俺はベッドから抜け出した。  和真はそのまま動けないでいる。俺は、学生服の白いシャツに袖を通すと、素早く着替えた。 ざあざあ雨が降っている。その激しさはたたきつけるように、水の欠片が砕け散るように容赦ない。 「雨、やまないからみたいだから、もう帰る」  俺は振り返らなかった。  振り返れば、化けの皮がはがれてしまいそうだったから。
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