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「……洸?」
うっすら開いた唇が夕焼けみたいに赤く火照ってみえて、俺は、勘違いしそうになる。
まるで誘われているような――――――――――――何を、だ? 和真は、男だ。
震えそうな声に気付かれないように、わざと無邪気を装って言った。
「ほんと和真って、いつも涼太のこと見てるよな」
焦っていたんだと思う。いつも浅野、と呼んでいたのに自分の中では涼太と呼びつけにしていたから、そのままポロリとこぼれた。
何気なく言ったはずなのに、和真は図星を突かれたように強張った。言ってはいけないことだったのかと怯むぐらい、和真はそのあと無口になった。
それ以来、俺はあんまりまともに和真を見られない。だけど、正視しない代わりに、心の中でずっともっと和真のことを気にしてる。
二年になっても。
そして、クラスが変わって三年になっても。
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