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俺は和真を、その場に仰向けに寝かせた。でも、この先どうすればいいかわからない。
和真は冷汗で張り付いた前髪を手の甲で拭ったが、そのまま手を眉間に当てて目を閉じている。だが、見守る俺の暑苦しい視線を感じるのか、気まずそうに口を開いた。
「ごめん……コート汚して」
「謝るようなことじゃないだろ」
焦りはするけど、辛そうな和真に余計な手出しもできず、俺は正座で枕元に控えたまま動けなかった。しかしその身じろぎもしない圧迫感に耐えかねるのか、和真は重ねて言った。
「洸、……も、帰っていいから、今、どくから」
「は?」
「帰るところだったんだろ、行きなよ。俺のは放っておけば収まるから大丈夫。塾とかあるんじゃないの? 洸は人がいいからいつまでも付き合わせちゃう」
和真はようやく目を開けて、ごく当たり前に続けた。その事務的な口調に悪気はないとわかっているのに、俺は胸に冷えたものを当てられた気分になる。
「……義理じゃない。俺がいたくているんだ。和真だから」
「どういう、」
思わず漏らした本音と同時に、俺があまりにわかりやすく沈んだ声を出したためか、和真は不自然な瞬きをした。俺は起きようとする和真の肩を押さえる。
「浅野、来るんだろ? それまではここにいる」
「いいよ、涼太だっていつになるかわからない。何考えてるのか最近わからないんだ」
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