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俺は意外な思いで和真の言葉を聞いた。
涼太は相変わらずだと思ってた。ぐいぐい前を進んでいくような力強さと朗らかさで、いつもクラスの中心にいる。地味な俺からするとその明るさがひどく眩しくて、苦手に感じることすらある。俺はだから、涼太と親しくしゃべる事はなかった。
「和真と浅野は親友だろ。幼馴染なんだって?」
「確かに長いよ。涼太のことはよくわかってるつもりだったけど……全部、俺の思いこみだったのかも」
和真は自分にも言い聞かせるようにそこまで言うと、口を噤んだ。俺の目線から逃れようとしたのか、壁際に寝返りを打つ。
背を向けられた俺は、思い切って和真の柔らかい髪をそっと撫でた。それだけの事なのに、俺の心臓は内側で跳ねるように暴れていた。
「洸、涼太を誤解してるだろ」
慰められているのだと察した和真は、物分かりよく、そう言った。
「誤解なのか? 和真はいつも振り回されてるようにみえる。浅野の適当な思い付きや、あの強引さに」
俺の声が張りつめた色合いを帯びて、和真は少し口ごもった。
「そういうの……俺たちの関係とか、洸に説明しなきゃ駄目?」
俺は髪を撫でていたその手を止めた。
取りつくしまもなかった。振り向きもしない和真に、俺はさらに理性のブレーキを失う。いつになく頑なな和真の態度は、涼太の事で悩んでいるのだと俺に確信させた。よく寝れていないのも、こんな風に調子を崩すのも。
俺はカッときて、その勢いのまま口走っていた。
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