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「説明なんかいらない。好き勝手にやるのは浅野の自由だけど、それに和真を巻き込むなら、いい加減にちゃんとしろ、って言いたいだけだ」
「でもそれが涼太の性格だから」
「俺ですら和真が不安そうにしてるのがわかる。浅野が気付かないわけないだろう。もしわかってやってるなら無神経だ」
言いながら、俺は強く意識していた。――――――――――――そうだ。
俺は。
俺だったら。
和真にこんな疲れた顔なんかさせない、絶対に。
「なんで洸がそんなに怒るんだよ」
俺の勢いが止まらないので、和真は俺の手を押し退けて、上半身を起こした。膝をついて身を乗り出していた俺の間近にその顔がある。
頭の芯が渦巻くような感覚に襲われた。呆気にとられている和真に、俺は自棄で続けた。
「納得いかないんだ、浅野のことで和真が傷ついてるみたいにみえるから」
「だとしても、それは俺が考えることだと思うけど?」
和真の問いかけは静かで、そして確かな威力を放っていた。
俺はぐっ、と詰まった。和真は淡々としてるけど、芯は強い。真正面からその眼を覗き込めば、すぐにわかることなのに。
「今日どうしたの。洸、おかしいよ」
「わからないか」
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