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俺は生真面目に言い切った。今度は和真が慌てる。
「いや、待って。ちょっと貧血おこしたぐらいで大袈裟だよ、俺は大丈夫だし」
「我慢するからこうなるんだ、その原因がコイツだろうが」
「違うんだ、大学がどうこうじゃなくて、俺は」
言いにくそうな和真を制して、俺は涼太に向かい合った。
「言ってやれよ、いつまでも中途半端にするなって。浅野の言う事は上っ面ばっかりでちっとも真実味がない。ここにきて本気でやれない奴の心配なんかすることあるか!」
和真が涼太を庇うのが気に入らなくてヒートアップする。だが、言い方が気に入らなかったのか涼太がついに声を荒げた。
「ああ、もう、うるさいんだよ! みんなして進路進路って。そんなの考えてないわけないだろうが。しかもなんだって委員長みたいなアカの他人にまで言われなきゃなんないんだ、あんたの正義感なんか和真によく思われたいだけだろ。俺の進路とごちゃ混ぜにすんな」
どさくさに和真への気持ちをばらされた気がして、俺も大声を出した。
「うるさいってなんだ! 大事なことだろう」
「だからこそ俺にしては慎重にやってんのに、脇からごちゃごちゃ騒ぎ立てるから上手くタイミングがまとまんないんだよ!」
「タイミング? なんだそれは。お前、人の話を聞いてるのか」
「聞いてるよ、だからムカついてるんだ。ちょっと黙ってろ」
涼太はカリッと親指の爪を噛んだ。そのまま上目遣いで図書室のカレンダーを睨む。
壁にべったり張られた年度切り替えの年間行事一覧表。来年の三月まで一目で把握できる。
涼太はしばらくその数字を確認すると、一人で勝手に頷いた。
「んー、よし、わかった。和真、今日から俺、ちょっと真面目にやるから。三か月ぐらい放置するけど、気にするな」
「え? 涼太? 何言ってるんだ」
「受験だよ、受験!」
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