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1.夏の庭 ……涼太
ほんとうは、ずっとずっと探していたんだ。
その日は、セミがワンワンと鳴いていて、しつこい耳鳴りみたいにずーっと世界の中で響いていた。
俺は暑いのは全然大丈夫で、特に夏の森は生き物がいっぱい呼吸しているみたいで大好きだ。小学生に戻った気分で駆け出したくなる。
緑の葉っぱが強い日差しで黄色に透けて揺れる。若木が日差しの方向に枝を伸ばしてるのも、足元の草がぼうぼうに茂って膝ぐらいまで絡まってくるのも、その草の匂いをかき分けてすすむのも、何だか生きてる!って感じで、わくわくする。
夏休みの終わりの日、好奇心に任せて出歩いた俺は、覆いかぶさった木の枝がぐるりと緑のトンネルを作ったのを見つけた。かなり低くて小さな穴だったけど、もちろん、俺はずりずりと地面に手をついて先に進んだ。
むき出しの土の部分は日陰でひんやりしてる。またたくまに服が泥まみれになったけど、そんなのはパパッと手で払えばいい。
こういう雑なとこを見つかると、弟の瑞樹に、ちゃんとしろー、ちゃんとしろーって口やかましく言われるけど、実のところ気にしたことなんかない。
とにかく、俺は薄暗がりのトンネルを抜けた。瞬間、目が眩んだ。トンネルの外は、あんまりまぶしかったからだ。
急に平地が開けて、遥か上に青すぎるほどの空がのぞいていた。さっきまでのムッとする蒸し暑さから一転して、胸がすくような風が吹いている。
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