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俺はちょっと正解に触れた気がして、また嬉しくなった。
「じゃあ、俺も手伝う!」
「え? いいよ、そんなのしないで。探検の途中なんでしょ」
和真は俺がふざけて言ってると思ったのか、やらせてもあんまり役に立ちそうもないと思ったのか、簡単にあしらった。
「大丈夫、俺ヒマだし、こういうの好き」
「えー、いいって。涼太が庭の手入れをするのなんて想像つかないよ」
「和真にできるなら俺にもできるよ。ほら、何すればいいか言って?」
「じゃあ…そうだな、そこら辺の草むしり、とかかな。花が咲いてるのとか、ちょっと大きくなってるのは違うから」
「わかった!」
困惑している和真をよそに、俺はさっそく草むしりに取り掛かった。
夢中で草を抜いていると、けっこう楽しくなってきて、どんどん目の前の地面がきれいになっていく。いつもなら飽きちゃうかもしれなかったけど、その時ばかりは張り切った。
クラスメイトだから学校に行けば会えるけど、俺はいつも和真と話し足りなかった。夏休みはほとんど顔を合わせなかったし、連絡入れても、ろくにかえってこないし、つまりこうやって久々に会えて俺はすごく嬉しかったのだと思う。
その間中、和真はシャワシャワと庭に水やりをしていた。
緑も地面もきらきらして、その水を喜んでいるのがわかった。和真は慣れてるらしく、広い範囲を木の上から地面までゆっくり、楽しむように濡らしていく。背伸びをしたり、屈んだり、そのたびに角度が変わる横顔は、優しい眼差しで満ちていた。通り雨の後、水滴で飾られた世界がひときわ美しくみえるように、その中にいる和真もきれいだった。
イラスト・ハナさんhttps://estar.jp/users/40010944
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