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力強く握られた手首。
この部屋から出ることを許さないとでも言いたげだ。
戸惑いながら見つめると、榊田さんは急に顔を近づけてきた。
えっ!?と思った瞬間には、唇が重ねられていた。
突然のことすぎて、頭がフリーズする。
押し付けられた唇は柔らかくて、目を開けたままの私の眼前には、目を瞑る端正な顔の榊田さんの顔があって……。
何が起きたのか全く分からないまま、榊田さんはゆっくりと顔を離した。
色気のある瞳で私を見つめながら、名残惜しそうに一歩後ろにひいた。
呆然としたまま立ち尽くす私。
まだ事態が飲み込めてないけれど、指が小刻みに震えている。
「……あの、これは、一体……」
震える唇で、やっとのことで言葉が出た。
すると榊田さんは、再び感情を隠して見えない鉄の仮面をつけた。
「これは……褒美だ」
冷たい顔をしながら、わけの分からないことを口にする榊田さん。
もう用は終わったと言わんばかりにクルリと後ろを向き、何事もなかったかのように書斎机に戻って行く。
キス、キスだ。
今のは、キスだ!
顔が沸騰したようにカァっと熱くなっていく。
頭が真っ白になって、とにかくもう恥ずかしくて、逃げるように部屋から飛び出た。
キス、された。
私、キスしちゃった。
生まれて初めて、キス、しちゃった!
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