突然のキス #2

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トイレに駆け込んで、個室に入って鍵を閉めて。  なに、なに、なに、なに!? うぎゃああああ!  声に出しては決していけない奇声を心の中で上げる。 真っ赤になった顔を両手で包みしゃがみこんだ。  褒美って何!? 何の褒美!? ゲームテストを頑張った褒美ってこと!?  褒美がキスって、なんじゃそりゃあああ!  大声で叫びたい気持ちを必死で堪え、堪えすぎてなぜか息が上がってきた。 指先はまだ震えているし、頭の中はパニック状態だ。  キスした時の唇の感触、ウッディな柑橘系の男らしくセクシーな香水の匂い、目を瞑る榊田さんの長いまつ毛が影を作っていたことなどを生々しく思い出して、一人悶絶する。  ああ、駄目だ。 こんなところでいつまでも籠っていたら怪しまれる。 とりあえず、落ち着け、私。 深呼吸をして、何事もなかったかのような顔をしてオフィスに戻るんだ。  私も、見えない鉄の仮面を被って、クールに! そうクールに装うんだ!  まるで雲の上を歩いているような気持ちでオフィスに戻り、デスクに腰をかけてパソコンと向かい合う。  クールな女を気取るんだ。 たかがキスくらい何よ、ふふんっと鼻で笑うような大人の女性を意識して! 絶対に、誰にも、バレないように!
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