突然のキス #2

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「ちょっと、さっきからニヤニヤしてて気持ち悪いんだけど」  隣の席の華原さんに指摘されて驚く。 「ええっ!私、ニヤニヤしてますか!?」 「無意識でニヤつくなんて更にキモい」  華原女王様の容赦ない突っ込みにダメージを受ける。  クールを装っていたのに、ニヤついていたなんて!心の中がダダ漏れ!  ていうか、ニヤついてるってことは、私、喜んでるってこと?  いかんでしょ!喜んじゃ! ここは、少女漫画風に「なんてことするんですか!?酷い、初めてだったのに!」と涙目で怒って、端正な顔立ちに平手打ちをするのがお決まりのパターンでしょ。  なに彼氏でもない男の人にファーストキス奪われて、浮かれてんの!  そりゃね、妄想の中では榊田さんに何度も唇奪われてますよ。 でも、現実に起こっちゃったら、そこは怒らないといけないところでしょ。  これじゃ本当に、褒美になっちゃうじゃん。 『俺様にキスされて喜ばない女などいない。 俺様のキスに舞い上がって、馬車馬のように働くがいい。ハハハハー』って高笑いしている榊田さんの姿が想像できる。  飴と鞭をこれほどまでに使いこなすとは! しかも飴が、よりにもよってキスだなんて!  榊田さんにキスされたからって、舞い上がって眠気も吹っ飛んで、仕事をバリバリやっちゃうような安い女じゃないんだから!  全然、全然、ぜんっぜん、喜んでなんかいないんだからね!  ファーストキスが榊田さんなんてラッキーなんて、思ってないんだからぁぁ!  こうして無駄に仕事が早く終わった私は、まさかの定時上がりを果たすことができたのであった。 
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